いい会社とは何か・・・
どんな要素があれば、“いい会社”と呼べるのか、具体的に考えてみたいと思います。
グット、グレート、エクセレント等、いい会社を形容する言葉、そして、これらについての研究、学術書は同様に数多くあります。いい会社の要素には、お客様第一の理念の他、経営者のリーダーシップや差別他社との違いを明確にする差別化戦略などが挙げられております。特に、環境変化が激しくなり、製品ライフサイクルが短くなってくる中では、近年、むしろ、トップのリーダーシップや、戦略よりも、従業員、現場力にフォーカスされている研究、学術書が多くなってきている印象を受けます。
ここで、“いい会社”として注目されている代表例を取り上げてみたいと思います。
(1)ピーター・ドラッカー
経済界にもっとも影響を与えた経営思想家である、ピーター・ドラッカーは、著書の中で、理想企業は、「全社員が何のためらいもなく、次の3つの問いにYES」と答えられるか?がポイントとおっしゃってます。
①あなたは敬意をもって遇されているか?
②あなたは貢献する上で必要な教育訓練を支援を受けているか?
③あなたが貢献していることを会社は知っているか?
これは、次のように言い換えることができるといえます。
①会社は社員を大切にしているか?
②会社はあなたがどんな貢献をしているか知っているか?
③会社は、あなたの学習の支援をしているか?
(2) 京セラの稲盛和夫氏
京セラ、KDDIを創業し、JALを立て直しをされ、たくさんの中小企業の経営者の育成をされる稲盛和夫の経営の理念は、「全従業員の物心両面にわたる幸福(しあわせ)を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」であると言います。経営者や、創業者が大株主として成功するのが目的でなく従業員の幸せと同時に、人類、社会の進歩発展に貢献することをうたっています。とくに、目指すべき物心両辺の幸福は、経済的な安定や豊かさを求めていくとともに、仕事場での自己実現を通して、生きがいや働きがいといった人間としての心の豊かさを求めていくといいます。
(3)日本で一番大切にしたい会社
「日本で一番大切にしたい会社」の著書である、坂本光司教授は、“経営とは、その組織にかかわりのあるすべての人々に対する使命と責任を果たす活動であり、成長発展でも、業界で一番になる、ライバル企業を打ち負かす活動でもない”と言います。
そして、経営者をはじめとする組織のリーダーは、とくに重要な関係者5人の永遠の幸福を追求・実現しなければならないと言います。
その5人とは、第1に、「社員とその家族」、第2に、「社外社員とその家族」である、第3に「現在顧客と未来顧客」であり、第4に、「地域住民・地域社会」であり、第5に「株主・関係者」であると言います。この時、第一順位に挙げられるのが、お客様でも、株主でもなく、「社員とその家族」となっているところが、大変興味深いです。
さらに、この中で取り上げられている長野県伊那市の寒天メーカーの伊那食品工業の社是は、「いい会社をつくりましょう~たくましく そして やさしく」であり、「いい会社」とは、単に経営上の数字がよいだけでなく、会社にかかわるすべての人々に日常会話の中で「いい会社だ」といってもらえるような会社」をいい、「会社は社員を幸せにするためにある」「同時に永続する事で社会に貢献する」。そして、第1に、社員の幸せを第一に考えると言います。
(4)鎌倉投信
鎌倉投信は、「いい会社」にフォーカスして投資する投資信託として有名です。この鎌倉投信が言うところの「いい会社」は何を意味するのでしょうか。HPによれば、「この鎌倉投信が定義するところの「いい会社」とは、規模の大小でもなければ、上場非上場も関係なく、「これからの日本にほんとうに必要とされる会社か否か」です。 株主や経営者など特定の人が多くの利益を得る会社ではなく、社員とその家族、取引先、地域社会、お客様、自然・環境、株主等の利益の調和の上に発展し、持続的で豊かな社会を醸成できる会社です。規模から質へ、拡大志向から循環志向へ、物から心へ、 競争から共創へと向かう社会の構造変化に順応できる会社です。」ここでも、最初に登場するのが、社員とその家族となっています。
(5)「最高の職場-Great place to work」
最後に、紹介したいのは、米国でとても有名なGreat place to work(グレイト・プレイス・ツゥー・ワーク)という、働きがいがある会社を研究する組織です。Great place to workは、新聞記者であった、レヴェリングによって立ち上げられ、20年以上にわたって世界49カ国以上で「働きがいのある会社」の調査を行い発表しています。毎年、経済誌フォーブスにもその順位が公表されるほどに毎年恒例となっています。働きがいがある会社とは、「従業員が会社や経営者、管理者を信頼し、自分の仕事に誇りを持ち、一緒に働いている人たちと連帯感を持てる会社」と定義し、リーダーとメンバー、トップと従業員の信頼関係が深まれば、その相互作用によって会社の体力が向上し、ひいてはこのダイナミクスが収益をもたらす原動力になっていくと考えて、「信用」、「尊敬」、「公正」、「誇り」、「連帯感」という5つの要素を基準に働きがいがある会社が分析されています。(出典:最高の職場より)
ここで、2017年のランキングを見てみましょう。
https://www.greatplacetowork.com/best-workplaces/100-best/2017
1位のグーグルを始め、名だたる企業が名を連ねています。
ここで取り上げられる“いい会社”の特徴は、お客様第一はもちろんのこと、“社員を幸せにする”ということと“社会に貢献する”という両面をフォーカスしていることが特長といえます。