最近、“従業員が架空口座を使って横領”、“勤務していた会社から現金をだまし取る”、など不正に関するネガティブなニュースは、後を絶ちません。不正対策の分野の世界的リーダーである米国の不正検査士協会(ACFE)によれば、不正は、「他人を欺くことを目的とした意図的な作為または不作為であり、結果として損失を被る被害者が発生し、不正実行犯が利得を得る」ことと定義されています。

そして、不正は、(1)資産の不正流用、(2)不正な報告、(3)汚職の3つと類型化されます。

(1)資産の不正流用:会社の資産の窃盗や濫用で、売上代金をかすめとったり、在庫を盗んだり、給与をだまし取ったりすること

(2)不正な報告:読み手を欺く目的で、会社の財務情報を意図的に誤った情報で伝えて、投資家などを欺くこと

(3)汚職:会社に対する義務や他人の権利に反する行為で、キックバックの受領や、自分だけ利益を得て、相手には不利益になるような利益相反などの行為などのこと

それでは、不正の事例として一般的に多く行われるケースを挙げてみましょう。

◆売上代金に絡んでよく起こる不正

(1)得意先から売上代金の回収を現金で行い、会社の口座に入金せずに着服
(2)飲食店で、店員が売上代金をレジに入金せず着服
(3)得意先に売上代金を水増し請求して、正規の金額だけ会社の口座に入金し、差額を着服
(4)得意先に売上代金の値引きを行い、値引きに対するキャッシュバックを着服
(5)得意先からクレームを起こさせて、賠償金を支払わせ、その一部の金額をキャッシュバックして着服

◆物品購入などの支払に絡んでよく起こる不正

(1)会社の経費で、私的な物品を購入
(2)架空の会社、契約や口座をつくって、架空の会社から請求書を発行し、代金を着服
(3)固定資産などの大型の資産を購入、広告宣伝などの発注に対する、リベートを着服

◆会社の資産に絡んで起こる不正

(1)会社で保管している金券、切手などを換金して着服
(2)倉庫などに保管されている会社の在庫を窃取
(3)会社の備品などを業者に売却

◆精算にあたってよく起こる不正

(1)私的な交通費や消耗品購入を会社経費として精算
(2)顔なじみのお店から白紙の領収書を入手して、架空の経費を精算
(3)架空の出張をでっちあげて、精算

私自身も、会計監査を通じて、数々の不正の現場に遭遇することがよくありました。

伝統的な不正の事例として、売上代金を着服する事例がよく紹介されますが、売上代金を着服してしまうと、現預金が帳簿や証票と整合がつかなくなり、遅かれ早かれ、不正が明らかになるということもあり、現場では、それほど出会うことはありませんでした。

最もリスクだと感じるのは発覚しにくい不正です。例えば、社員が、取引先と結託して行う、固定資産などの購入や広告宣伝費の発注にあたってのバックリベートがその一例です。

購入するものやサービスの内容が専門的になればなるほど、上司をはじめ、周囲が内容をしっかり把握できておらず、任せきりになってしまうため、発見できないということが起こります。

特に、この手の不正は、金額的にも大きく、会社に与える被害も大きくなりますので、要注意です。

こちらの記事のフルバージョンは、ヤフーニュースにて掲載されています。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180419-00010001-ffield-bus_all